今回は中学受験の「全落ちしたら…」という禁断のテーマです。
私も中学受験の講師を18年間やっていますが、子供の頑張っている姿を毎年見ているので、全落ちの子供が少しでも減ればという思いで書きます。
特殊な場合を除いて「全落ちしたら…」は子供にとって不幸です。
そうならないために今の中学受験の概況、実際の全落ちをしてしまった子供の話等を踏まえて全落ちしないための解決策を書いていきます。
この記事を書いた人:さば先生
中学受験の塾講師として18年。今までの教えてきた生徒数は3000名以上。教室長としても複数教場を運営後、算数の教科責任者として若手の育成や教材作成を手掛ける。現在は東京の有名塾の管理職かつ現役で教壇に立ち続けています!
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中学受験で全落ちは子供にとって不幸|現在の中学受験の概況
世間は少子化で子供の数は減ってきていますが、中学受験の世界では受験率がここ数年上がり続けています。
結果的に中学受験を志す子供の数は年々増えています。
受験者数 | 受験率 | |
2018年 | 37939人 | 13.7% |
2019年 | 39959人 | 14.0% |
2020年 | 41288人 | 14.3% |
2021年 | 41266人 | 14.3% |
2022年 | 42350人 | 14.7% |
このデータは1都3県の2/1の受験者数です。
2/1の受験者なので公立中高一貫校の受験生は含まれていません。
これに対し1都3県の私立中学募集定員の総数は約40500人です。
えっ…
ということは…
そうです。どうしても定員からあふれてしまう子が出てしまうわけです。
2023年度はさらに受験者増が見込まれていますので今まで以上に慎重に考えていかなければいけません。
中学受験で全落ちはなぜ起きる?
全落ちをしてしまうケースは大きく2つあります。
- 志望校のレベルが高くて合格校が得られない
- 「落ちたら公立へ」という考えを持っている
志望校のレベルが高くて合格校が得られない
志望校のレベルが高くて実力が足りずに合格を勝ち取れなかったケースです。
塾の面談でいろいろとアドバイスはされるはずですが
「うちの子は大丈夫」
「偏差値の低い学校には入れたくない」
といった理由でチャレンジ校のみの受験をして全落ちしてしまう。
こういった考えは父親が持っていることが比較的多いです。
男性は結果が全てという考えが強いですので…
親が「落ちたら公立へ」という考えを持っている
上のケースと近いですが、偏差値〇〇以上の学校しか受験をさせないというケースです。
「うちの子は全落ちしたら公立の中学校に進学させますので…」
これはすごく子供がかわいそうだなと思います。
今まで遊ぶことも好きなことも我慢して勉強してきたのに親の勝手な考えでで公立中学に進学するわけですから。
そして、なんだかんだで小学校の友達もその子が受験をしたことは分かっているはずです。
子供も公立中学に通いずらいですよね。
残念ながら私も説得を試みますが、このようなケースで全落ちをして公立中学校へ進学した子も何人かいます。
【実話】全落ちをした子の話
私は中学受験塾の講師生活は18年目となりましたが、
過去に全落ちをしてしまったケースは実はそう多くはありません。
そこはご安心ください!
それでもずっと私の記憶の中に苦い思い出として残っています。
ただ、全落ちではありませんが
押さえ校のみに受かってそこには進学せずに公立中学に進学をした子は過去に結構います。
いくつか私の過去にあった全落ちの家庭の話をしたいと思います。
- 親のプライドが高すぎて全落ちをしてしまった子
- 【例外】経済的理由で全落ちをしてしまった子
親のプライドが高すぎて全落ちをしてしまった子
4年生から入塾したある男の子の話です。低学年の頃から面談にはよく母親が来ていました。そのときからよく相談で「うちの父親はテストの結果でしか子供の頑張りを認めない」とよく嘆いていました。母親はすごく話の分かる方で子供のことも理解はしていましたが、このころからなんかこの家庭は雲行きが怪しいぞ…と感じていました。
6年生になると面談に父親も現れるようになりました。子供の頑張りをいくら面談で伝えても「でも成績が伸びてないですし…」とか「お子様にはこういう学校が向いていますよ」と言っても「いやその学校は偏差値が低いので受けません」といった感じ。
子供の偏差値は55に届かないぐらい。目指している学校はすべて60以上。第一志望校の偏差値は65。
こういう方はなかなか塾の方からアプローチをしても簡単に意志を変えることはないので、私としては何とか子供の学力を上げて合格に近づけることしかできなかった。
そして、いよいよ入試を迎えました。
予想通りというか、残念ながら1日、2日と合格校はなし。それでも受験が終わった後は塾に顔を出してくれました。母親と子供は悲しさを通り越してまったく覇気がない感じでした。教室に生徒を呼び出して話をしようとしましたが、ただ生徒は泣き続けているだけで話が全く進みません。完全に自信を失っていました。後から母親に聞いた話ですが、帰りの電車の中で子供が母親に「自分はダメな人間だ、もうどこも受かる気がしない」と漏らしたそうです。
そんな姿は家庭でも同様だったそうです。ここで驚きのできごとが…。
父親がそんな母親と子供の姿を見て3日の受験予定だった学校を変更すると連絡があったのです。それでも偏差値でいえば60の学校を55に変えるというものでしたが。
しかし、3日の結果は不合格…
中学入試は精神面も重要です。いつも通りの彼であれば合格できる可能性は十分にあった学校です。ところがズタボロな状態の彼が力を発揮することはなく不合格に。そしてそのまま4日以降も合格を掴めぬまま受験が終了しました。
3日の学校を急に変えたにも関わらず、そこも不合格になってしまった。父親のプライドのせいで彼の受験で受けたショックが膨らむ結果になった可哀想なケースでした。
変なプライドが邪魔をして結果的に子供をどん底に突き落としてしまった悲しいケースです。
【例外】経済的理由で全落ちをしてしまった子
全落ちのことばっかりを考えると暗くなってしまうので!
私の塾講師人生の中で唯一の全落ちしたけど不幸ではない例も紹介します。
小学4年生から通塾していた女の子。毎回楽しく授業に参加していましたが、5年生になったころに両親が離婚をしてしまい経済的に苦しい状況になってしまった。
母親が退塾をしたいということで私が面談をしました。これは事情が事情なので引き留めることもできず、これからの学習のアドバイスをして面談は終了しました。
しかし、次の日にお母さまから電話が…
「どうしても子供が塾をやめたくないと言っている。私立は受けられないけど塾に通うことはできますか?」
私は二つ返事で「喜んで!」と母親に伝えました。
それから彼女は特に変わった様子もなく、いつも通り元気に塾に通っていた。志望校は私立から変わってしまったが、第一志望校の国立中学に向けて勉強を頑張った。そして徐々に成績も上がりはじめ、どんどん彼女のやる気に火がついていくのを感じていた。
6年生になると塾に来るたびに、国立中学の過去問を抱えて私のところに来てしつこく質問を繰り返していた。彼女は何か受験をとても楽しんでいるように見えて不思議と私も彼女から元気をもらっていた。一度も合格最低点を超えることはなかったが、これだけ頑張っているんだからと私も希望を持ち始めていた。
そして迎えた2月3日、彼女が受験をする学校は1校なので彼女にとっては最初で最後の中学受験。
しかし残念ながら結果は不合格…
そして親から電話があり「子供が直接先生に入試の結果を報告したいと言っているので今から塾に行く」と。
どんな顔をして彼女に会えばいいのだろうか…
正直、どんな言葉をかければいいのかまったく分からなかった。
そんな不安をよそに何と彼女は満面の笑みで塾に現れた。そして笑顔で私にこう言った。
「中学受験は不合格でした。でも頑張ったので後悔はありません。高校受験でリベンジします!」
子供が笑顔で私と母親が涙ぐんでいるという変な空間でしたね。
母親と後で話をしたが、家で合格発表を見た際、不合格の瞬間に彼女は号泣して床に倒れこんだそうです。でも絶対に塾の先生に自分で報告をしたいというので迷惑かもと思ったが塾に連れてきたということでした。母親からは最後まで感謝のお言葉をいただき、私は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
チャンスはたったの1回。彼女の中学受験は不合格。全落ちというかたちで入試が終わった。
余談ですが、それから3年後、彼女は見事に希望の公立高校に合格をしたと報告をしに塾に来てくれました。
この子は全落ちをしたけど唯一の例外で最終的に幸せになった例外のケースです。
中学受験で全落ちをさせないために
中学受験全落ちをしないために次の4つのことをしっかりと行いましょう。
- 進学意思のある学校を選ぶ
- 併願シュミレーションをしっかり組む
- 家族全員の方向性を統一する
- 特待生も視野に入れる
進学意思のある学校を選ぶ
偏差値が高い学校が良い学校!偏差値の低い学校がダメな学校ではありません!
しっかりと子供の趣味や性格を考慮して志望校を選択するべきです。
志望校選びについてはこちらの記事をお読みください。
一番伝えたいことは第三志望だろうが、第四志望だろうが、進学の意思がある学校を選ぶことです。
併願シュミレーションをしっかり組む
そして志望校が決まったら併願のシュミレーションをしっかり行いましょう。
ポイントは体力と精神面を考慮すること、押さえ校をしっかり前半で確保することです。
また、一番大事なことは最悪のケースを想定して併願パターンを考えておくことです!
家族全員の方向性を統一しておく
入試は三位一体とよく言われます。
両親と子供と塾の目指しているものが一致しているほど合格する可能性が高まります。
特に父親をいかに巻き込めるか、父親と意見が一致しているかは大きなポイントとなります。
小6になってからではなく低学年のうちからよく家族で話をしておきましょう!
うちは父親があまり協力をしてくれなくて…
たまにでいいので面談や保護者会にお父様が参加して欲しいですね!
特待生も視野に入れる
経済的に厳しい方は私立の特待生を狙っていくのも作戦の一つです。
各学校で基準や給付額は大きく違いますので確認をしておきましょう。
中学受験で全落ちは子供にとって不幸|過去の実話をもとに解決法とは?|まとめ
私立受験の現在の状況を考えると定員の枠よりも受験者の方が多いのは事実です。
そして全落ちになってしまう原因は子供の学力不足ではなく、親のプライドや考えによることがほとんどです。
全落ちにならないために次の3つを意識しましょう。
- 進学意思のある学校を選ぶ
- 併願シュミレーションをしっかり組む
- 家族全員の方向性を統一する
- 特待生も視野に入れる
全落ちは本当に子供には不幸だと思います。
あなたのお子様が「中学受験で全落ち」にならないことを私は願っています。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
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